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「――西君ったら……」
ほなみは思わずクスリと笑う。次の瞬間、彼は真剣な表情でほなみの腰をつかみ低く囁いた。その声を聞いただけで、蕾が蕩けてしまいそうだった。
「……ほなみ。いい?」
その問いの意味を、ほなみは分かっていた。答えも、最初から決まっていた。ほなみは黙って、彼の目を見つめ頷いた。
西本は、すかさず熱く硬い自分を沈み込ませ、ほなみを目眩く快感の中へ一気に引きずり込んだ。
「――ああっ――!」
「うっ……」
彼が動く度に、ほなみの中が形を変えて音を立て、猛りを締め付ける。西本は真っ直ぐな髪を揺らし、苦しげに顔を歪ませ、快感に呻く。その表情に見とれてしまうが、烈しく突き上げられ、そんな余裕は無くなってしまった。
「好きだ……っ」
「西くっ……」
お互いの肌をさぐりあい、夢中で貪り合い、他人が聞けば陳腐とも取れる愛の言葉を幾度も囁き、時に叫びーーどれ程の時間そうしていただろうか。ついに、ほなみは絶頂に達した。
西本も同時に果て、ほなみの中に熱い精が流れ込んで来る。ふたりは息を乱したまま見つめ合い、優しく口付け合った。西本は、ほなみを抱き締めながら、宙を見つめ呟く。
「……誰かに見られてたような気がする……」
「……え?」
ほなみがギョッとすると、彼は笑って頬を軽くつねってきた。
「……神様、に覗かれてた、のかな?……なーんて」
何気ない彼の言葉に、ほなみは自分の胸の奥に、ズシリと重りがおちたような気がした。
「昼間から……こんな事してさ?でも……悪い事じゃないものね?ふふ……そうだろ?
俺とほなみは……愛し合ってるんだから……」
目の奥が痛くなって、涙が溢れそうになり、今にも嗚咽を漏らしそうだったが、彼の胸に顔を埋めて誤魔化した。西本が、愛おしむようにほなみの髪を優しく撫でる。
――神様。お願いします。
私達を、罰しないで下さい……
せめて……今だけは。
今だけ――
暖かい胸の中で幸せに酔いながら、何処の神様に許しを乞えば良いのか、誰に祈れば良いのかもわからないまま、そんな言葉を、心の中で何度も繰り返した。
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