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彼女は、壁一面に書かれた、callingに今まで訪れたミュージシャン達のサインを夢中になって見ていた。
気持ち前屈みになり、時には指でなぞりながら小さな溜息を吐く。西本が入って来た事に全く気がついていない様だ。スタッフは片付けに行ってしまったらしく、彼女は一人で西本を待っていたらしい。
――いや、俺を、というよりクレッシェンドのメンバーを待っていた、と言う方が正しいのか?必俺のファンであるとは限らないしな。
野村は、無口で物静かなイメージ(実際野村はとても寡黙なのだが)で、ホスト風の派手な外見に対し、音楽に対して真面目な一面が女の子達の心を擽るらしい。
神田はボケ担当で、一見おかしな事ばかり言う馬鹿にも見えるが、実は周りを良く見ていて、場の雰囲気を和ませる事にかけては相当心を砕いている。長身と手足の長さを生かした華麗なギタープレイにしびれる女の子ファンや男ファンも数多い。
ドラムでリーダーでもある三広は、一見して女と見紛う愛らしい顔立ちで身体も小柄だが、ドラムプレイはテクニカルでパワフルで、プレイ中の精悍さと素のあどけない可愛らしさ(男の俺からすれば男を『かわいらしい』という形容詞で表すのは理解に苦しむが)
とのギャップが、ファンにはたまらないらしいからな――
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