愛しい奏で

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 喉の奥から声が出ているのに自分でも気付かないまま、西本は囁くように歌った。 『何の為に 唄うんだい?  デタラメな音とか  ガラクタみたいな小さな夢とか  そんなものばかりかき集めていた どうして僕は 君が その胸に呑み込んだ言葉に気付けないんだろう?  "君の為に 唄う"  そう言う事は  たやすいけれど  今、そばで愛を囁けない僕は  そんな風に 答えるしかないんだよ  君の為に……』  指を止め、寝息を立てるほなみを見つめると、かつて感じた事の無い感情が込み上げる。  ほなみの笑顔が側にあれば、どんな事でも出来るような気がしてきた。  ――俺はここで終わったりしない。なにがなんでもやってみせる――  西本は、その拳を握り締めた。
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