山田真琴

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「じゃあ、山田が死んだ時のお前のアリバイも、成立しないままだな。これじゃあ、殺人容疑で逮捕となってもしょうがない…よな?」 聡の言葉を聞いていた金本が、俯いたまま目を見開いて視線を左右に走らせる。 聡は続けた。 「俺らが追ってるヤマは詐欺の方じゃないんだ。山田殺しの方だ。お前はあの日、山田と会ってて、目撃されてる。金銭トラブルもあった。事件現場の近くで、お前の自転車まで目撃されてて、アリバイもない。どういう事か分かるか?」 そこまで聡が言うと、金本は顔色を蒼白く変えて顔を上げた。 「お、俺じゃないんだ!本当だ!」 そう言って椅子に居直った金本。 聡は机から身を引いた。 「本当だって!誰かが俺を嵌めようとしてやがるんだよ!そうだ!間違いねー!誰かが…俺を…誰が…」 すると金本が、何かを思い付いたようにして机に身を乗り出した。 「もしかしたら、和也かも!嫌、町田のおっさん!嫌々、マキかもしんねーし、あ、待てよ!あの女って事も十分あり得る!」 金本は取り乱し、記憶を辿る為なのか、縦横無尽に視線と口を動かして落ち着くと、聡の顔を伺った。 「和也?町田のおっさん?」 木下が顔を歪ませた。 暫く沈黙が続いて、どこからともなく溜息が漏れると、聡が口を開けた。 「金本、お前なー。自分のアリバイも証明できない、警察の質問には答えられない、白かも、黒かも分からないそんな奴が、ああだこうだと言った所で、信用されるとでも思ってんのか?」 金本は、そう言われて言葉を失い、固まった。 どんなに大声で喚いてみても、顔色一つ変えない、冷静沈着で隙がなく、反論すら出来ない聡に、打つ手を失った金本が怖気付いたのか、神妙な表情に変わると溜息をついた。 「わかったよ。喋るよ。」 金本はそう言って、供述を始めた。 「ハァーーー。まさかの、山田殺しでは白。ハァーーー。」 署内の自動販売機の前で、木下が大きな溜息をついて泣き言を漏らした。 「だけど、進展したじゃないか。溜息をつくな。」 聡は缶コーヒーの缶を開けると口にして、近くにある椅子に座ると手帳を取り出した。
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