20人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだ、本人にとったらそれが理由なんだよ。だから、そう云った人間を育てない為にも、理解する必要があるんだ。どうしてムシャクシャしたのか。どうしてムカついたってだけで行動に移してしまったのか。理性は何故、働かなかったのか。刺したらどうなるのかが、どうして分からなかったのか…。とかな。」
木下は聡の言葉に面を喰らっていた。
「それって、教育の話ですよね。俺らはどうしようもないじゃないですか。」
「そうか?」
「そうですよ!それは、もう、警察の仕事の領域を超えちゃってるじゃないですか!」
木下は、「それに、俺、そんなに子供産めないし、育てきれないです。」と冗談を足して笑った。
そんな冗談を言う木下に、聡は笑って続けた。
「そうだな。俺も無理だ。こんな甲斐性無しじゃ、娘一人で精一杯だ。」
それを聞いた沙羽の事を知る木下が、更に、声を上げて笑う。
「だけどな、こんな俺らでも、教育の現場に、こんな事件を起こしてしまう人間のこの現況を伝える事は出来る。俺ら警察だけじゃない。法曹界の人間もだ。今だってそう云った活動をしている人はいるが、まだ少ない。それに、学校だけじゃなく、地域に家庭にも訴えていく必要がある。それもネットとかの、snsを使ってじゃなく、直接にだ。この伝える側の深刻さは肌で感じて貰って、もっとしっかりと危機感を持って貰わないと、人は新しい情報に埋もれてしまって、すぐ忘れてしまうからな。」
最初のコメントを投稿しよう!