不可解の極み、校閲・校正課!

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「ねえ、野口さん?確か編集に仲のいい友達が居たって言ってたわよね?もしかして、この雑誌の担当変わった?」 沙羽は怖い顔をして、訂正をし終えたプリント用紙を見ながら、パソコンでの作業を進めていた。 3係は今、売れ行きの悪い、例のメンズファッション誌を、明日までに初校戻しをする目標で取り掛かっていた。 「そうみたいなんですよね~。」 野口はそう言うと、沙羽の手にしている、チェックされて至る所に赤字が付けられている原稿のプリント用紙を見て、微苦笑を浮かべた。 この場合で言う赤字とは、文章の誤脱や誤用を赤のマーカーで訂正された文字や記号の事だ。 「私も、一昨日この話を聞いたんですけど~、この雑誌の担当の編集が、二人とも変わったらしくて、その二人ってのが~、センスの良さを買われたみたいで~。だからか色校は~、殆ど直しがいらないですね~。何だか他所のめちゃくちゃ売れてるファッション誌みたいにさまになってるし!」 野口が嬉しそうに、微笑みながら続ける。 「それに江崎さん、気付きました?何だか前より服のコーデも変わって、良くなってると思いません?変わったのは編集だけじゃなく、企画もだそうですよ!」 「そう言えば、確かに服のセンス、良くなってるっすね。」 話を聞いていた坂井が口を挟んできた。 野口の言葉に黙って耳を傾け、いまだ怖い顔をしている沙羽が「そうみたいね。だけど…。」と言って、キーボード操作をしながらパソコンのスクリーンを睨みつける。
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