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「戻りました~。はい、コーヒー。」
上手いこと息抜きが出来たのか、コンビニから戻ってきた野口が、朝と変わらないテンションでコーヒーを渡していく。
「あ、サンキュー。はい、百八十円。」
「ありがとね。あれ、江崎さんは?」
「江崎さんならカフェスペースです。あ、これ、江崎さんが、皆で食べてって貰ったので、どうぞ~、食べましょ~!」
「まじで!ラッキー!」
野口が嬉しそうにチョコレートの包みを開けると、田中が一番に手を伸ばしてきた。
「はぁ、なんなの、一体。ほんと、最悪な日だわ。」
コンビニから戻った沙羽が、エレベーターから降りると、野口と別れてカフェスペース(談話スペース)に向かっていた。
そのカフェスペースは、エレベーターから降りると、沙羽達の部署とは反対側にあり、カフェスペースと言っても、自動販売機と、自由に飲める煎茶とほうじ茶と、お水、そしてお湯の出るサーバーがあるだけで、後はその前に椅子とテーブルが少し置かれているだけの、ほんのちょっとした場所にすぎなかった。
そのカフェスペースの、外の景色が見下ろせる窓際の席に、携帯を手に頭を抱える黒谷の姿があった。
「なんで、出ないんだ遥貴は。…一体、何をやってる…。」
黒谷は両肘を突いて両手で顔を覆うと、ため息をついた。
暫くして、顔を覆ったついでに疲れた目を指圧して、息を吐いた黒谷が、顔を上げて外の景色に目を向けると、目の前のガラスに映った沙羽の姿に驚いた。
「あ、え、江崎さん…でしたよね…。お疲れ様です。」
「………………………」
振り返った黒谷が、自分の斜め後ろに立つ沙羽に尋ねるが、返事もなく黙ったまま此方を見ている沙羽に、強張らせた苦笑いを浮かべると、「ど、どうぞ?あ、俺、席を外しましょうか?」と、言った。
「…………いえ、居てくれて構いません。」
やっと口を開いた沙羽は、徐ろに黒谷の隣に座った。
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