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社内は騒然となり、近くにいた数人の社員が、慌てて沙羽を止めるために駆け寄った。
そう、沙羽はデスクの上に乗り上がると、勢いを付けて黒谷に、膝を使って飛び蹴りをしたのだ。
黒谷には何が起きたのか、全く理解ができなかった。
呆然となったままの状態で上体を起こした黒谷だったが、直ぐさま沙羽に胸倉のジャケットを掴まれると、馬乗りで組み敷かれてしまった。
「なんなの!何が、最初からよ!違うわよ!どうして黙って帰ったり…。心配するじゃない!」
「え!?」
沙羽がそう叫ぶと黒谷が声を上げた。
直ぐに、他の男性社員から抱えられる様にして引き剥がされてしまった沙羽は「え?じゃないわよ!惚けないで~!」と大声で叫んだ。
「な、な、どうしたって言うんだい。一体。」
狼狽える課長の杉本が、やっとの思いで口を開くと、沙羽と、黒谷の二人に質問をした。
「君らは知り合いなのかい?な、何が、どど、どうしてこんな事に…。」
気が動転している杉本が、あばばばば…と声を漏らすと、二人を交互に見ながら二人の返事を待っていた。
未だに取り押さえられてる沙羽は、怒り心頭の様子で黒谷を睨みつけている。
「それが、私にはさっぱり…。知り合いも何も、今日、と言うよりたった今、始めてお会いしたと思うんですが。」
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