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「はぁ、…すみません。多分人違いだと思うんですが…。」
誰がどう見ても困惑気味な様子の黒谷に、社員全員が、どういう事だと沙羽の方へと視線を移した。
「でーすーよーねー。江崎さん!一体どうしちゃったんですかー!何だか最近元気もないし、様子も変だったしー。」
そんな沙羽に居た堪れなくなった野口が駆け寄ると、明らかにいつもと様子がおかしい沙羽のその肩に手を添えて、心配そうに顔を覗いた。
「あれ。」
そう言ってハッとなった野口が、顎を引いた。
「江崎さんが変なのは元々だっけ?」
「おい!」
沙羽は呆れて、間髪入れず野口に突っ込みを入れる。
いやいやいやいや、私真面だし!
そう沙羽は思ったが、しかし、思案投げ首の黒谷が
「もし私が、ここまで人を怒らせるような事をしてたなら、忘れるとも思えないですしね…。少なくとも思い当たる節があって、気づくはず…。ですが…。はぁ、すみませんが、やはり人違いをされているとしか…。きっと、その様子じゃ、以前どこかでちょっとぶつかったとか、失礼な事を言ったり、してしまったりとかでの、そんなレベルでもなさそうですし…」
と、ため息混じりにそう言うと、さっきまで沙羽の腕を掴んで取り押さえていた男性社員が口を開いた。
「なんだ、それ。意味わかんね。江崎ぃ、なんか夢でも見てたのかー?だいたいあんたも、そうゆう事ならそんなに謝んなくてもいいんじゃないの?逆にキレてもいいと思うけど。飛び蹴り?されたんだろ?」
それは、沙羽の同期の渡辺大地だった。
透かさず「ボマイェです!」と野口が訂正する。
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