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杉本が、「それじゃ、今日も頑張ろう、よろしくね~」と言って、そそくさと仕事に取り掛かかると、みんな怪訝そうな顔で沙羽を一瞥して、各々が其々の仕事に取り掛かり始めた。
「違いますってば~~!」
最早、誰も、沙羽の泣き言に耳を貸そうとしない。
何なのこの状況!これじゃまるで、私が頭の可笑しな人みたいじゃない!寝ぼけてる訳ないでしょ!何なの!
沙羽は再び、黒谷の方を見ると睨みつけた。
黒谷も既に皆に倣って仕事に取り掛かっていて、黒谷と同じ1係である渡辺に説明を受けていた。
「え、江崎さん、怖いですよ?さ、仕事しましょう?」
野口が腫れ物に触る様にして、沙羽をデスクに座らせると、今度は「信じられない。ありえない。何なの、これ。ふざけてる…。」と呟き始めた沙羽を挟んで野口と坂井が目を合わせた。
いったい江崎はどうしてしまったのだろうか。さっきのは何だったのだろうか。
二人はそう思った。
沙羽のいる、校閲・校正課では、1係から3係までの三つの班で分かれていて、それぞれが五人程で構成されていた。
大手の出版社とは違い、オフィスも狭いし、そのオフィスが入っているビルも新しくない。
そもそも、売れている雑誌といえば、女性週刊誌と、女性ファッション誌位で、男性向けのファッション誌は、廃刊寸前のところまで来ている。
後は料理、園芸、和装、将棋、釣り等の雑誌と、フリーペーパーを発刊しているのだが、これも正直言って、伸びは今一で良い方ではない。
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