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空は晴れていた。
空中の水分が全て抜けきったようなカラカラの空だった。
穏やかな風も吹いていた。
今日は幸せ日和だと思った。
これから始まる新しい日々を祝福してくれているみたいだ。
世界が僕たちを祝福してくれるのだ。
なんだか照れくさい。
早く君に会いに行こう。
僕たちのこれからを早く始めよう。
きっと幸せ日和はより一層、色を深めるだろう。
それなのに君は泣いていた。
公園のベンチで一人で泣いていたんだ。
両手を握り締めて震える膝を押さえていた。
時折、その可愛い顔を両手で覆っていた。
ペットの猫がいなくなった悲しみで休んでるって、クラスメートが言っていたのを僕は聞いた。猫は死ぬ時どこかいなくなるから君は死んだって思ったんだね。
「猫が死んだくらいで休むなんてどうかしてる」ってみんな言ってた。
大切なものは人それぞれだから仕方ないのかもしれない。
僕は君が好きだ。
アボガドが大好きな君も、勉強が苦手な君も、友だちと喧嘩した後「言い過ぎたかな」って反省する君も。僕の変顔を見て笑う君も、あどけない君の寝顔も大好きだ。
恋をしたんだ、君に。
君の全てが大好きだ、って言いたかった。
でも君が誰かに恋をすることだけは受け入れられなかったんだ。
君は僕と一緒にいてすごく幸せそうだけど、僕はもっとたくさんのことを君にしてあげたかったんだ。大きくなって君を両手で抱きしめたかった。
いつも君が僕を抱きしめてくれるように。
だから僕は神さまにお願いした。
「僕を人間にして下さい」って。
でも君は泣いていたんだ。
僕のことを思ってすごくすごく泣いていたんだ。
僕は気づいたんだ。
僕は猫として君のそばにいなきゃ駄目なんだって。
今までの僕でよかったんだって。
僕が僕として生まれてきたことにはきっと意味があった。
だから、僕は猫になったんだ。
これから神さまに謝りに行こう。
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