至宝

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「親は親、僕は僕、で生きていきたかったので。ですから仕事も、自分がやりたい仕事を選びましたし、これからも親に頼らずひとりでも生きて行けるようにと思っています」  ちょっと感心した。  でも、こういう話、もっと早くに聞きたかったな。  美容院ではとことん無口だった。少しでもシゲのことを知ることができたら俺の印象もずいぶん変わっただろうと思うのに。  いや、どうだろう……。  セフレとうまく付き合って浮かれていたあの頃の俺がこの話を聞いても、なんら心を動かされることはなかったかも知れない。  全てはタイミングなのだ。今こうしてシゲを知ることが出来てよかったのだ。 「なあシゲ、酒はもういいや。俺、シャワーしたい。シゲも一緒に入る?」 「な、夏輝? 酔ってるんですか?」 「酔ってないって、あ、いや、酔ってるかも。でも一緒にシャワーしたいって思ってるのは本当だよ」  シゲはあっという間に真っ赤になった。  いい年して初心なヤツ。  俺は背伸びしてシゲにキスをした。そっと触れるだけの軽いキス。 「夏輝! い、今の……」
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