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「そんな! それじゃ僕は現子に殺されるしかないってことですか?」
「心配するな少年。そうさせないために俺たちみたいなのがいる」
蘭丸が刀の鞘を立てて見せたのは、依頼人を安心させるためだ。
「どんなクズ野郎でも依頼人の命は護って見せるから」
亜緒は一際大きな欠伸を作った。
そして二人のお腹が同時に空腹を訴える。
「「金次第でな」」
二人の欲望が言葉となってシンクロした。
「こういう店は初めてなので相場というものが分からないんですが、だいたい幾らくらい掛かるものなんですか?」
「最低でも一千万円……くらい」
亜緒が提示した金額は大袈裟である。
闇の支配率が大きいこの世界では、妖絡みや呪術めいた事件がそれほど珍しいわけではない。
だから商売として成り立つわけで、実際は客の取り合いにより価格はリーズナブルである。
もちろん依頼内容や始末屋の腕などによって、多少料金は変動する。
一千万円以上は鬼や吸血鬼などが対処相手であった場合の基本価格である。
黄泉帰りは二百万くらいが相場だ。
「一千万? 学生の僕にそんな大金用意できませんよ!」
「じゃあ、大人しく殺されるか? 君は彼女のように愛する人になら殺されてもいいとは思えないのか?」
「思えませんね。僕は彼女と違って、好きな人とは一緒に生きて幸せを追求するタイプなんです」
「清々しいまでのクズっぷりだが、はした金で動くほど僕たちは安くないぜ?」
「僕だって何の用意も無しに、こんな如何わしい店にやってきたりはしません」
如何わしい店。という件で二人の表情が曇る。
「三百万までなら都合つきます」
「それは君の真っ当な金か?」
失礼を承知で蘭丸が問う。
学生の口から三百万という金額が出れば、誰だって怪しむ。
今までの聴取から依頼人はマトモな精神構造をしているとは思えないし、結果人殺しをするような人間だ。
この金がワケありなら受け取るわけにはいかない。後でトラブルに巻き込まれたくはないからだ。
「もちろん、僕が自由に出来るお金です。何か困ったことがあれば使うようにと父から渡されたもので、ちょっとしたお小遣いみたいなものです」
「三百万がちょっとしたお小遣いだってさ」
亜緒が鵺に耳打ちする。
「失礼だが、君のお父上はどのような仕事をなさっているのかな?」
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