吾輩は看板猫である

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「お客様、やめて!」 瑠奈の悲鳴のような声と、周りにいた子供たちの 「あーっ、あいつルカを苛めてるー!! 」  の合唱であたりは騒然となった。 「お客様」 苛立ちを抑えたような声が飛んできた。 「うちの者へこのようなことをされては困ります。申し訳ないですが、お引き取り願えますか」 毅然と言い放ったのはご主人だった。いつ来たんだ? まあ俺ら柔軟性に富む猫はこんくらいじゃ痛くも痒くもないけどね。今だってすぐ起き上がったし。 「僕が悪いの? こいつじゃないの?」 金髪男が俺を指さす。 「お客さ、」 「ルカが悪いわけないじゃないですか! この子は誰にでもああやって親しみを示すんです!」 説得しようとしたご主人の声を遮って、瑠奈が悲しそうに、でもきっぱりと言い放った。 「そーだよー、おじちゃんが悪いよー」 いつか俺をおもちゃにした小学生のガキたちが声をそろえてヤツをなじった。 「ふん、なんなんだよいったい!」 金髪男は憮然として店を出て行った。 「こらおじちゃん、ルカに謝れー!」 子供たちの声を背にしながら。 「瑠奈、大丈夫だったか?」 皆に背を向けてるから俺以外には見えないけど、ご主人ったら瑠奈の肩に置いた手をそのまま下に滑らせて彼女の手をやさしく握ってる。 「だっ、大丈夫です」 瑠奈は真っ赤になって俯きながらも手は離さない。 ……っておい! 蹴られたの、俺だよ? 俺!
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