吾輩は看板猫である

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今日は最近人気のシリーズの最新刊が出る日だ。 さっきから何度もその本を手にした客がレジにやってくる。 俺が今いるところは、アメリカの小さな大学街にある人気書店 『Prose and Mind』、通称Prose(プロウズ)のレジ机の上だ。 そう、『レジ机の上』だ。 …………。 なんで俺がこんなところにいるかってーと、それがそもそもこの話の始まりなのだ。 おっ、あれは俺のご主人、ジョーの親友、ケンじゃないか。 やっぱり彼も買いに来たな。しかも山積みの一番上の1冊をどけて2冊目を手にしている。 セコイぞケン。 「ふにゃああ」 「あら、ルカ、おねむなの?」 俺の方を見てにっこりと瑠奈(ルナ)が笑った。 うっ、この笑顔はヤバい。あの人が惚れるのもわからんでもないぜ。 今日レジを担当してる彼女は、去年日本からやって来てこの店を手伝い始めた。 始めの頃は英語もままならなくて失敗続きだったとかいう彼女も、今では俺の猫目で見ても、堂々としたもんだ。 「よっ」 「あ、ケン」 「みゃああああ」  こら俺を無視するとはいい度胸だな。 「げっ、なんだお前、こんなとこで何してんの?  てか俺の大事な本に触んな」 金払うまではお前の本じゃないだろ。 「ルカ、いい子にしててねー」 「なんでルカがレジ机の上にいんのよ」 「うん、それがねえ、ジョーがルカをこの店の 『看板猫』 にしたいって」 「はあっ!?」
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