吾輩は看板猫である

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*** そいつを初めて見たのは2週間前の水曜日の午後だった。 その日、耳の後ろにできた湿疹の診察のために、俺は動物病院に連れていかれた。 ご主人のジョーは 「ついでにProseの様子も見て行こう」 と車を回した。 ご主人は普段は投資コンサルタントの仕事をしていて、親から受けついだこの書店は雇われ店長に任せている。 でも時々こうして店 (Prose) にオーナーとして顔を出すのだ。水曜日と金曜日は特に。 それというのも、その両日は瑠奈が店で働いているからなのだ。 俺には曜日感覚なんてなかったのに、瑠奈のおかげでこの2つの曜日と日曜日だけは真っ先に覚えた。 店の裏の駐車場に車を停めると、俺をケージから出して抱きかかえたまま、ご主人は裏の入り口からスタッフルームに入った。 そのまままっすぐ店内に向かい瑠奈に声をかけに行くのかと思いきや、ご主人の足がスタッフルームの出口でピタと止まった。
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