吾輩は看板猫である

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「みゃ?」 見るとレジ机に乗り出すような勢いで、金髪の小柄な男が瑠奈に話しかけている。 「ねえ、君、この本が原作の芝居見た?」 「いえ、まだです。でもすごい話題になってますよね」 「そうなんだよ! なかなかチケット取れないんだけどさ、僕、関係者知っているからさ、君さえ興味あるなら頼めるよ?」 ぎゅ、と俺を抱きかかえてるご主人の力が強まった。 おいおい、俺に当たらんでくれ。 見たとこまだ20代半ばくらいのそいつは他の客が来ないことをいいことに、そのあとも瑠奈と10分くらいはしゃべりまくって上機嫌で出て行った。 本は1冊しか買わなかったくせに。 だけどもっと不可解なのは、それをスタッフルームから何も言わずにじーっと見続けていたご主人だよ。
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