33人が本棚に入れています
本棚に追加
博士の研究所は理緒の父親が買い上げた。
莫大な金が動いたが、富豪の社長には痛くない額だったし、研究所で作られる物はヒット商品として売れると言う目算がある。それらが全て自分の会社のモノになるなら悪くない話だった。
博士は何か感じる所があり、美しい少年、理緒と繋がりが持てるのであればと、期待を持ち、話は上手く纏まった。
理緒は博士の研究所に足しげく通って、研究のプロセスや結果を、その目で確認にしに来た。
それから×年が経ち、理緒はC学2年生になる。
「今日は、ばかに来るのが遅かったね。研究所の職員は皆んな帰ったよ。私ももう帰る所だった」
博士が研究所の所長室に入って来た理緒に言う。
「別に、研究所に誰も居なくてもいい。合鍵がある。今日は学校で父兄も含めた集会があった。校長からの話や、質疑応答が長くて遅くなったんだ」
学生服のブレザーを着た理緒は、所長室のデスクに近付くと、その上に学生鞄を投げる様に置く。
そして、まだその身体には大きな椅子にドカッと乱暴に座り、背をもたれかけ、今日1日、博士が研究した事を記した日誌を見た。
「どんな話があったんだい」
「僕のクラスメイトが行方不明になった事件の説明だよ」
理緒は、日誌から目を離さない。そんな事件より、今日の研究日誌に何が書かれているかの方が重大だと言った様子だ。
「あぁ、新聞にも載っていたね」
「メソメソ泣き出す生徒もいて辛気臭かった」
「君は泣かなかったのか。まぁ、君が泣く訳がないか」
「イヤミのつもりなのか? それに人の為になんか、僕は泣かない」
最初のコメントを投稿しよう!