記憶に残るキスの味

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「何?」 内心、少しどきりとした。 彼も昨日、披露宴に出席していた一人だからだ。 「俺ももらおうと思って。さよさんの珈琲美味いから」 「そ。じゃ手伝って」 別にそれほどこだわってるわけじゃないけど、うちで余ってる電動ミルを試しに持ってきて使ったら、好評だっただけだ。 朝のうちに一日分挽いておいて、後はメーカーを使うだけ。 敢えてこだわりを言うなら、ちょっと粗挽きにしてあるから粉は少し多めに、ということぐらいだろうか。 「カップ出して」 「うぃっす」 砂糖とミルクを用意しながら、カップを並べる東屋くんの腕をついちらりと見た。 袖から見えたのは、クロノグラフの腕時計。 洗面所にあったのは、皮のベルトのフォーマルを意識したシンプルなものだった。 東屋くんが付けるには、少し大人びた印象だ。
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