記憶に残るキスの味

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まあ、もしかしたら、慶事用のものなのかもしれないけれど。 腕時計にこだわりがあるなら、使い分けで持っていてもおかしくはない。 でも、東屋くんは何事もなかったかのようにいつもの調子で話しかけてきた。 昨夜のキスの相手なら、何かしらあってもいいはずだし。 そう納得すると気が抜けた。 珈琲の香ばしい香りが給湯室に漂う中、少しの間互いに沈黙する。 砂糖入り、ミルクのみ、両方、と室内のメンバーを思い出しながらカップに用意していく。 「東屋くんはブラックよね」 ちゃんと覚えてるけど。 ちょっと沈黙が息苦しくて、間を繋ぐために口にした。 「はい。さよさん、全員覚えてるんですか」 「うん。毎日淹れてると覚えちゃった」
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