記憶に残るキスの味

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「え、なんで?」 「なんでって……」 「な、なんか話でもあんの?」 た、例えば。 腕時計の話とか? 訝しむ私を不審に思ったのか、彼もおかしな顔をする。 「いや、話っつうか」 「何」 「あ、仕事です。仕事のことでちょっと」 「ああ、なんだ」 なんだ。 それならそうと、はっきり言えばいいのに。 安堵して、止まっていた手をふたたび動かす。 「何、悩みごと?」 「そう! そんなようなもんです。営業の仲間内に溢すのは癪かなあって」 「なるほど」 彼も結構、負けん気が強いらしい。 まあ、営業なんてそうでなければ前に出ることは敵わないのかもしれない。 園田もそうだった。 「だったら今日、お昼一緒に行く?」
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