記憶に残るキスの味

22/38
前へ
/38ページ
次へ
「いや、昼の時間だけじゃ短いかなー、て」 「そうなの? じゃあいつ?」 「今晩とか」 「いいけど」 今日は特に、約束も何もないし。 仕事も多分、問題なく終わる。 「でも私なんかでいいの? 何か相談するなら、営業が嫌ならうちの課長とか。主任とか」 「何言ってんですか。さよさんに聞いて欲しいんです。俺、さよさんの仕事尊敬してるから」 「え」 「皆言ってますよ。データ揃え頼んでも的確だし、資料の作成もすげえ見やすい。読む側のことちゃんと考えてんなって。ほんのちょっとの表や色分けとかも手、抜かないじゃないですか」 すごい、助かります。 と、人懐こい顔で微笑む。 ちょっと、きゅんと鳴った。 僅かなことだ、些細なことに目を配ってこだわった仕事でも、気付いてもらえることは少ない。 「あ、アリガト」 おのれ東屋。 こういうところほんと上手いなと思う。 褒め上手というか、褒めどころを探すのに長けているんだろう。 だから入社してきた頃から人気がうなぎ上りなのだ、女性社員から。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9669人が本棚に入れています
本棚に追加