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──さむい
さむい……な。
真っ暗だ……
いつも、真っ暗だ……。
『──おいで』
あ、呼んでる。
『こっちだよ、
ほら……暖かいね……』
いつも、優しい声でボクを呼んでくれる。
《だれ?》
暗い……暗ーい中にポッカリ暖かな光の当たる場所で、[キミ]がボクを呼んでる。
だから、ボクは急いで駆けていく。
『お前は、柔らかいね』
傍に行くといつも、優しく撫でてくれる……
《やわらかいのは、[キミ]のお陰だよ》
[キミ]がいつもキレイにしてくれるから……
ボクは[キミ]の膝の上で、心地好くて目を閉じる。
『お前は、暖かいね』
[キミ]の手が暖かくて、届く声に心が安らぐ。
《あったかいのは……[キミ]と居るからだよ……でも、[キミ]は……だれ?》
ボクは目を開けて顔を上げる。
[キミ]の顔を見上げる。
にっこりと優しい、柔かな笑顔──のはずなのに、はっきりと見えないよ。
暗いからなの?
眠いからなの?
『──暖かいね』
《ねえ、[キミ]はだれ?》
ボクは声を出して問い掛ける……
[キミ]といる場所だけが明るい。
なのに、[キミ]を見上げて話し掛けるとぼやけて霞んでしまう。
いつも、そうだ。
《ねえ、だぁれ?》
ボクは一生懸命声を出して問い掛ける。
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