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「……八神くん、一応聞いておくけど……何か案があるの?」
「ああ、いいアイデアがあるぜ」
「本当かい!?」
俺の言葉に、及川が反応する。
「それで、一体どんな!?」
「まあ、慌てんなって……準備があるから、ちょっと待ってろ」
大丈夫かな? と不安そうな顔で見てくる神楽坂と姫野はスルーして、俺は一旦部室をあとにした。
◇
それから二十分ほど経ってから、俺は再び部室にやってきた。
「――遅いわよ……一体何をしていたの?」
待ちくたびれた様子で三人が出迎える。
「悪い、探すのにちょっと手間取ってな」
「探すって、何を――」
俺の後から部室に入ってきた人物を見て、全員が絶句した。
「えっと……私に用事って何かな……?」
そこにいたのは、黒沢茜本人だったからだ。
「「本人連れてきちゃったーッ!?」」
まさかの強硬手段に、姫野と及川が声をあげた。
神楽坂も「やっぱり……」と、額を抑えて呻いた。
「だいたい、俺はそういうまどろっこしいの嫌いなんだよ。こっちのが手っ取り早いだろ……あと、ちょい間を繋いどいてくれ」
微妙な反応を示す神楽坂たちに言うと、俺は及川の制服を引っ張って部屋の隅に連れていく。
「ちょっとちょっと!? 何で本人がいるの!?」
「俺が連れてきたからに決まってんだろ。安心しろ、理由までは言ってねぇから」
「いやいやいやいや! 勇気が出ないから相談にきたんですけど!?」
どうにも納得がいかない様子の及川に、耳打ちする。
「男にはな、負けるとわかってても戦わなきゃいけないときがあるんだよ」
「振られること前提なのか!? 余計告白出来ないから!」
「心配すんなって。振られたら、俺たちがお前の慰め会を開いてやるから……もちろんお前持ちでな」
「僕の慰め会なのに僕が奢るの!? 絶対おかしいよ! 君面白がってない!?」
グチグチと文句言う及川が流石にウザくなったので、背中をド突いた。
「痛ッ!? 何するんだよ!」
「うるせー。もうここまできたんだ、お前も覚悟決めろよ……大丈夫、目を見て告白すればちゃんと相手に伝わるから。お前なら出来る! だから自信持てよ」
「八神くん……うんッ! 僕、やるよ! ありがとう!」
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