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俺の声援に力強く頷いた及川は、黒沢を連れて部室から出て行った。
散々文句を言いながらも、きっと及川ならちゃんと告白出来るはずだ。
「全く……一時はどうなるかと思ったわよ」
「本人を連れてきたときは、心臓止まるかと思った……」
疲れた顔で気持ちを吐露する二人は机に突っ伏した。
「及川の相談は告白する勇気が出ない、だからどうすればいいのか? ……つまり、あいつが告白せざるおえない状況を作って、ちょっと背中を押してやればいいだけの話だ」
出ない勇気を、出させることが出来ればいいわけだ。
「本当に……あなたは強引なんだから」
「そうかぁ?……俺は案外上手くいくと思うぜ? 及川はチキンでヘタレでウザいけど……根性はある男だからな」
俺の言葉に頷いたときの目は、何かを決意した男の目だった。今の及川なら当たって砕ける勇気はあるはずだ。
「もちろん、振られた後の慰め会も開いてやらねぇとな」
そう言って笑う俺を見て、二人は苦笑した。
人は誰でも、何かしらの悩みを抱えながら生きている。
俺は、そういう奴の力になりたい……といつの間にか考えるようになった。
多少おふざけでも、強引でも、それで悩みが少しでも消え去るのなら……。
コンコン。
今日も悩みを抱えた生徒が、部室のドアを叩く。最後の頼みの綱として、俺たちの元へやって来る。
さて、今回はどんな悩みなのか……ま、どんな悩みだろうと解決してやるさ。
「ようこそ、ボランティア部へ」
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