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その時、ちょうど手の空いていた結乃と数人が、営業1課へ回されることになった。
こんな幸運は、二度とないかもしれない……!でも、慣れない仕事をうまくこなせるだろうか……。大きな期待とそれと同じくらいの不安が入り混じりながら、数日間限定の結乃の営業1課での勤務が始まった。
キョロキョロと見回して、敏生の姿を探してみる。すると、……いた!真剣な表情で課長と向かい合い、何やら話し込んでいる。
社会人になって、毎日のように大口のお得意様を相手にしているからか、とても清潔感があって凛々しくて、高校生の時に比べて格段に洗練されてカッコよくなっている。
そんな敏生と同じフロアにいるだけで、結乃は感動した。ここに居れば、敏生に自分の存在を知ってもらえるかもしれない。……そして、もしかすると、高校時代に同じ場所で過ごしたことを思い出してくれるかもしれない。
……と、明るい希望を抱いてみたけれど、やっぱり現実はそうそう旨くは行かないらしい……。
結乃が着くことになったのはオジサンの営業マンで、人使いがとても荒く、敏生とコミュニケーションどころではない。それに、営業マンはオフィスにのんびりなんてしていない。敏生の一日の大半は外回り、帰ってきても営業会議。その姿を見ることさえ、なかなかできなかった。
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