935人が本棚に入れています
本棚に追加
すると、結乃とは反対方向から同じように土を掃き集めてくれている男子がいる。その男子は、ある程度土を集めたところまで一緒にやってくれて、気づいたら風のように姿を消していた。
――……もしかして、あの時の男子は、芹沢くんだった……?
うつむいて掃除をしているその男子の姿が、ぼんやりと目に浮かぶ……。でも、記憶が曖昧で、その男子の顔をよく思い出せない。
――……でも、もしそうなら、芹沢くんは高校生のときから、私のことを知っていてくれたの……?
そこまで、思考が勝手に独り歩きすると、結乃の胸にキュンと微かな痛みが走った。甘い感覚が満ちてきて、それは次第に淡い期待へと変化し始める。
一日働いた仕事の疲れも吹き飛んでしまった。
家に帰ってからも、結乃の胸はずっとドキドキしていて、早く明日になってほしいと思った。明日になって、また敏生に会いたいと思った。
最初のコメントを投稿しよう!