Advent Love

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私は何も知らなかった。 ううん、違う。知りたくなかったんだ。 「真陽ちゃん?」 「開けないで、お願い…」 私、開けたくなかったんだ、アドベントカレンダーの最後の引き出しを。 本当はずっと待っていた、救い主が現れるのを。 そんなのいるわけないなんて思いながら、誰かがこの平坦な日常から救い出してくれるのを。 でも彼が救い主って事は、今日で終わるって事。 だから… 「真陽?」 「……ごめ…」 何も知らなくて良かったんだ。 むしろ、何も知らない方が良かったんだ。 だから逢いたくなかったのに。 「どうしたの?昨日から何か変だよ?」 「なんでもないってば」 心配そうに私を覗き込んだ彼の首筋に、自分から腕を回して引き寄せる。 「もうサンタクロースは終わりでしょ?」 「あぁ、そうだね、俺もやっと普通の男に戻れるよ」 私の肩に顔を埋めた背の高い彼の、籠もった声が聞こえてきた。 「じゃああげる」 「…ん?」 「願いを叶えてくれたお礼」 困ったように私を見下ろす彼の頬に触れて、背伸びしてゆっくり唇を近づける。 「キス、して?」 「今?」 「そう、今。いらない?」 「……いるに決まってんじゃん」 込み上げる涙を堪えて私が笑うと、亮の瞳から笑顔が消えた。 「いいの? 本当にもらっちゃうよ?」 「うん…いいの」 今日で最後だから、最後の夜だから。 私の全部、あなたにあげるから。
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