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そしてまた、いつもと同じ夜が来た。
閉店間際の店の外に出て、ポインセチアの鉢植えを仕舞う。
何気なく見た大通りの横断歩道。
もう来ないと分かっているのに、あなたの姿を探してた。
「真陽ちゃん、お疲れ様! やっと終わったね! 今年はケーキも残らなくて良かったわ」
店長は機嫌がいい。
今年の売上目標を達成できたから。
「あ、これ、打ち込んでもらっていい?」
「はい、わかりました」
「……ごめんね? もしかして予定ある?」
「いいえ、ないですよ、大丈夫です」
手書きの予約伝票。どのケーキが何個売れて、売上がいくらだったか、集計をとってパソコンに入力していく。
仕事があって助かった。今日は流石に、一人じゃ辛い。
「あ…」
伝票の束の中に、彼の名前を見つけて手を止めた。
個人情報はシュレッターにかけて消去しなきゃいけないけど、それがどうしても出来なくて、店長に気付かれないようにそれをそっとエプロンのポケットに仕舞った。
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