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仕事を終え表に出ると、相変わらずイルミネーションはチカチカ煩くて、吹き抜けるビル風がやけに冷たかった。
「寒いよ、亮……」
逢いたい。やっぱりあなたに逢いたいよ。
役目を終えた救い主はもう現れない。そんな事分かっていたけど、彼がいない街がこんなにも暗く冷たいのなら、私はもう、きっと一人では歩けない……
『救い主ってさ、いるとしたら自分の中にいるんだよ』──
行き交う人の波から外れふと足を止めると、微睡みの中で聞いた彼の言葉を思い出した。
それが本当なら、あなたに逢いたいと願うだけじゃダメだって言うなら、自分次第で変えられるって事?
今まで諦めてばかりだったけど、諦めなければ願いが叶うの?
最後の望みをかけて、バックから携帯とさっきの伝票を取り出した。
寒さでかじかむ指の震えを抑えて、その番号にコールする。
『はい、岡辺です』
数回の呼び出し音の後に聞こえた彼の声。
『もしもし? もしかして真陽?』
穏やかで優しいその声に、胸が締め付けられて上手く話せない。
『初めてだね、電話くれたの』
「……うん、あの…」
『どうした? 泣いてるの?』
「ちが、泣いてな……」
『今どこ?』
「お店の、前…」
『待ってて? 今行くから』
「……え?」
一方的に切れた電話をしばらく呆然と見詰めていた。
今行くって? どうして? だってあなたは……
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