Advent Love

17/19
前へ
/19ページ
次へ
仕事を終え表に出ると、相変わらずイルミネーションはチカチカ煩くて、吹き抜けるビル風がやけに冷たかった。 「寒いよ、亮……」 逢いたい。やっぱりあなたに逢いたいよ。 役目を終えた救い主はもう現れない。そんな事分かっていたけど、彼がいない街がこんなにも暗く冷たいのなら、私はもう、きっと一人では歩けない…… 『救い主ってさ、いるとしたら自分の中にいるんだよ』── 行き交う人の波から外れふと足を止めると、微睡みの中で聞いた彼の言葉を思い出した。 それが本当なら、あなたに逢いたいと願うだけじゃダメだって言うなら、自分次第で変えられるって事? 今まで諦めてばかりだったけど、諦めなければ願いが叶うの? 最後の望みをかけて、バックから携帯とさっきの伝票を取り出した。 寒さでかじかむ指の震えを抑えて、その番号にコールする。 『はい、岡辺です』 数回の呼び出し音の後に聞こえた彼の声。 『もしもし? もしかして真陽?』 穏やかで優しいその声に、胸が締め付けられて上手く話せない。 『初めてだね、電話くれたの』 「……うん、あの…」 『どうした? 泣いてるの?』 「ちが、泣いてな……」 『今どこ?』 「お店の、前…」 『待ってて? 今行くから』 「……え?」 一方的に切れた電話をしばらく呆然と見詰めていた。 今行くって? どうして? だってあなたは……
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加