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仕入れ先から届いたアドベントカレンダー。それをレジ横の棚に飾りながらため息をついた。
家の形をした木の箱には24個の引き出しがあり、中にはメッセージと焼き菓子が入っている。
子供達は毎日その引き出しを開けながら、救い主の到来を──クリスマスを心待ちにしている。
だけど私には──この小さな洋菓子店で働く私にとっては、クリスマスは苦痛なイベントでしかなかった。
もう何年も恋愛なんてしていない孤独な三十路女には、他人の幸せを微笑ましく眺める余裕なんてない。
朝から晩までケーキを売って、チカチカ煩いだけのイルミネーションを横目で見ながら、独り暮らしの暗い部屋に帰る。
疲れた…もうイヤだ。
クリスマスなんて大っ嫌いって、そう思ってた。
だけど……
その年の『アドベント』は、それまでとは少し、違ったんだ。
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