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閉店5分前。
いつものように通りに出て、店の前に並べてあるポインセチアの鉢植えを仕舞う。
情熱的な赤、凛としたその花は、クリスマスムード一色の街の片隅でひっそりとその美しさを主張していた。
鉢植えを仕舞い、それからメッセージボードを片付けるためにもう一度外へ出て、何気なく渋滞中の大通りに視線をやると、すぐそばの横断歩道を全速力で駆けて来る人影が見えた。
……かなり急いでる? あの人。
「ごめんなさい、すみません」と、人混みを掻き分けて走って来る。……こっちに向かって?
え? ヤダ、怖い!
とりあえずお店の中へ避難しよう。そしてここを通り過ぎてくれる事を祈ろう。
だけど数秒後、自動ドアが開いてその人が店に飛び込んで来た。
完璧に開ききっていないガラスのドアに、肩をゴンッ! とぶつけながら。
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