ペテン師の暇潰し

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「おや、貴方は?」  如何にも人の良さそうな笑みを浮かべながら、若い男が聞いてきた。  ついさっきまで、空いた時間に小説を読もうとブラウザを開いていた筈なのに、気がついたら目の前に真っ白いスーツを着た細身の男が立っている。  周囲も見慣れた景色が消え、どこまでも広がる白の空間になっている。見渡す限り、一面が白一色の不思議な空間。  正面に立つ男の表情は常に笑みを湛えているのだが、まるでキツネの様に細めた瞳の奥に見え隠れする感情は淀んだ黒色に満ちているように思えた。  言いようのない不快感と畏怖を覚える。 「そんなに身構えないでください。そうか、貴方が……。いやいや、こっちの話ですよ。」  わざわざ聞こえる声で何やら独り言を言っているが、男の言葉が意味することを全く理解できない。夢でも見ているようなフワフワとした感覚に襲われる。  数秒前の記憶では、【この作品を読む】ボタンをクリックした筈だが……。
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