序章 For you

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「きゃっ!」  二人は爆風により吹き飛ばされ、地を転がる。爆風が起きるということは、敵が攻撃してきたということ。それを瞬時に理解した二人は、適度な物陰を見つけて隠れた。 「周囲に熱源は無かったはず! どこから――」  女は驚愕しながら、男の方へ眼を向けると、 「くっ……」  男が苦悶の表情を浮かべていた。 「どうしたんで――」  女は言葉を失った。何故なら、先ほどまであったはずの男の左腕が無くなっていたのだから。 「リ、リーランド中尉! 腕が……」 「あんまり騒ぐな。腕ぐらいどうってことない」  強がるが、顔は痛みによって歪んでいる。 「だ、大丈夫ですか? 中尉。今手当を――」 「……大丈夫だ」  小ぶりのウエストポーチから応急道具を取り出そうとした女を、絞り出したような声で制した。 「傷の断面が焼けてやがる。あの音と威力。そして、遠方からの攻撃……恐らく敵の武器は06式簡易型電磁砲(レールガン)だろう」  よく見ると、男の断面から出血は無いが、黒く焦げている。体から離れた腕は、今頃消し炭にでもなっているのだろう。  簡易という名が付くものの、06式簡易型電磁砲は重量が一トン以上あり、連射もきかない武器だ。しかし、一度敵を捉えてしまえば、音速の電磁弾で敵に風穴を開けることができ、有効射程距離は一万メートルにも及ぶ。 「撃たれたのは痛ェが、どてっぱらに風穴が開かなかったことと出血がないことは不幸中の幸いか」  おどけてみせる男だが、表情に少し翳りが見える。 「とりあえず包帯は巻いておきましょう」  女の言葉に頷き、取り出した包帯を巻いていく。 「レールガンの弱点は連射性能が無いこと。チャージまでは時間がかかる。つまりは今が好機だってことだ。譜月、急ぐぞ」  包帯を巻いた男は立ち上がろうとする。しかし、女は先の攻撃を懸念してこう言った。 「ですが、レールガンが一つとは限りませんし、中尉は負傷しています。他の攻撃だって――」 「譜月」  女の言葉を遮るように、男は右手を女の肩に乗せた。 「あいつは俺たちを助けてくれた。だからこそ、今度は俺たちがあいつを助けなくちゃならない。なら、躊躇している暇ない。そうだろ?」
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