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「分かっています。ですが、中尉の怪我がありますし、せめて援軍を――」
「――いい加減にしろ!」
男の突然の怒号に女はビクリと震えた。
「お前が俺を心配してくれるのはありがたい。だが、優先事項を考えろ。今回の任務はあくまであいつの奪還だ。軍人なら、任務遂行が一番大切だって分かるだろ? あいつがいなくちゃ俺らはジリ貧になるだけだ。仲間の為、守るべきものの為、あいつの奪還を今は一番に考えろ!」
それに、と言って男の声色が優しくなる。
「あいつに一番会いたいのはお前のはずだ。こんなところで俺の心配をしてないで、あいつのことだけを考えてろ」
「……はい!」
「なら行くぞ!」
二人は小銃を握り、一気に目的地に向かって走り出した。
しかし、敵の攻撃は06式簡易型電磁砲だけではない。四方から戦闘ロボや自律式指向性82ミリ迫撃砲など様々な敵の攻撃が二人を襲う。
「くっ……」
身を守る為にどこかに隠れるということはしない。ただ、ただいち早く目的地にたどり着く為、二人は走り続けた。
すると、白いひと際巨大な建物が見えてきた。その建物こそ二人が目指していた場所である。
しかし、その行く手を阻むように十体ほどの蜘蛛型自律保安ロボットがわなわなと建物から出てくるのが見えた。
「もうすぐなのに……!」
正面の敵の出現に対し、憤りを現わす女だが、
「敵さんも相当行かせたくないみたいだな」
男の言葉を聞き周囲を見渡すと、正面だけではなく、四方を様々な保安ロボットに囲まれていた。
「譜月、俺はここでクソロボット共の相手をする。お前は正面のスパイダーを倒して、そのまま中に入れ」
「ですが!」
「俺のことは気にすんな! 伊達に中尉って階級を貰ってねェからな!」
残る右腕で小銃を撃つ男。
男の身に心配を覚えたが、先の『優先事項を考えろ』という言葉が頭の中で反芻する。彼の意を汲みためにも行動は決まっていた。
「分かりました。ご武運を!」
男をその場に残し、女は建物に向かって走り出した。
「邪魔です!」
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