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譜月を肩口から一瞥すると、視線を設計図に戻すが、
「手伝ってあげようか?」
一心の横に移動してきた譜月は調子よく尋ねてくる。
「いいよ。自分でやるから」
横に目もくれず、一心は集中しようとする。しかし、
「へぇ、アンドロイドかぁ」
「お前、勝手に見るなよ!」
一心は急いでパネルをスリープモードにする。
「いいじゃない、減るもんじゃないし」
口を尖らせる譜月。
「俺の集中力が減ってるわ!」
「細かいこと気にしない。男なんだから。それで、これ何?」
鷹揚な譜月に反論するのも面倒になり、一心は素直に答えた。
「半年後に発表する自由課題」
「それでアンドロイドを作ろうとしてたわけか。で、今何してんの?」
「設計のチェック」
「ふ~ん。課題でこれをやるってことは、まだアンドロイド好きは治ってないみたいね」
「うるせぇ。アンドロイドは俺の生き甲斐なんだよ」
手を後頭部で組み、椅子の背凭れに体重を預ける。すると、
「おいおい、こんな真っ昼間からデートか?」
「佳吾」
入り口の方から声が聞こえ、視線を向ける。そこには、譜月と同じく幼馴染の屋良佳吾の姿があった。
「ほら、差し入れ」
そう言い、佳吾は菓子パンを一心と譜月に一つずつ投げ渡した。
「ありがと」
「佳吾、お前授業はどうしたんだよ?」
佳吾は一心や譜月と同じ大学に通っているが、心理学を専攻しているため学科が違う。
その為、今の時間授業が入っていてもおかしくない。
「かったるいからサボった」
ずけずけと教室に入ると、一心の隣の席に腰を下ろす。
「何だ、この歳になってからグレたのか?」
「ま、そういうことにでもしておいてくれ」
歯牙にも掛けない様子で、自分の分の菓子パンを頬張る佳吾。
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