第一章 「帰りましょう」

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 譜月を肩口から一瞥すると、視線を設計図に戻すが、 「手伝ってあげようか?」  一心の横に移動してきた譜月は調子よく尋ねてくる。 「いいよ。自分でやるから」  横に目もくれず、一心は集中しようとする。しかし、 「へぇ、アンドロイドかぁ」 「お前、勝手に見るなよ!」  一心は急いでパネルをスリープモードにする。 「いいじゃない、減るもんじゃないし」  口を尖らせる譜月。 「俺の集中力が減ってるわ!」 「細かいこと気にしない。男なんだから。それで、これ何?」  鷹揚な譜月に反論するのも面倒になり、一心は素直に答えた。 「半年後に発表する自由課題」 「それでアンドロイドを作ろうとしてたわけか。で、今何してんの?」 「設計のチェック」 「ふ~ん。課題でこれをやるってことは、まだアンドロイド好きは治ってないみたいね」 「うるせぇ。アンドロイドは俺の生き甲斐なんだよ」  手を後頭部で組み、椅子の背凭れに体重を預ける。すると、 「おいおい、こんな真っ昼間からデートか?」 「佳吾」  入り口の方から声が聞こえ、視線を向ける。そこには、譜月と同じく幼馴染の屋良佳吾(やらけいご)の姿があった。 「ほら、差し入れ」  そう言い、佳吾は菓子パンを一心と譜月に一つずつ投げ渡した。 「ありがと」 「佳吾、お前授業はどうしたんだよ?」  佳吾は一心や譜月と同じ大学に通っているが、心理学を専攻しているため学科が違う。 その為、今の時間授業が入っていてもおかしくない。 「かったるいからサボった」  ずけずけと教室に入ると、一心の隣の席に腰を下ろす。 「何だ、この歳になってからグレたのか?」 「ま、そういうことにでもしておいてくれ」  歯牙にも掛けない様子で、自分の分の菓子パンを頬張る佳吾。
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