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 半地下の石牢は湿っていた。  地面すれすれの小窓は、看守の気まぐれで開けてもらえた。それを忘れられて、雨や虫が飛びこんでくることもあった。ふとしたはずみで木々の隙間から月が見えるのは、わずかな慰めだった。  元々時間の感覚に乏しい性質だ。どれほどの月日が流れたかは気にならなかった。寝て起きて、日に一度の食事をして寝て起きるの繰り返しだ。不満らしい不満は、独房が彼には広すぎるということだった。  罪人だと自覚はある。何事も受け入れる覚悟はできていた。  地下牢を出された理由は、彼に知らされなかった。  長い廊下を歩き、一階分の階段を上がっただけで息が上がった。膝が上がらない。こんなに重いものは自分の体ではないと、心底恨めしく思った。  連れていかれたのは、駅と呼ばれる部屋だ。天井は高く丸く、窓はない。壁は背の高い書棚で埋め尽くされている。円形の床には魔法陣が幾重にも重なって描かれている。  彼は魔法陣の中央に立った。 「マリマリが待ってる」  ぶっきらぼうな駅係の魔女は、スツールに座ったまま杖で魔法陣を叩いた。
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