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シャリオットに呼ばれて、ナイナイは准将の部屋に入った。焦げた麦のにおいがする。床には灰になった魔法陣が残っている。何度出かけたらしい。
「俺が詳しく説明しておけばよかった」
「知ってても止められなかったと思う」
「ニナのことがあったから、今度はうまく止められると思った」
「ニナとピートは違う」
ニナは太陽に合わせて居場所を変えていた。少しでも明るい方へと移動する。夕方には准将の部屋で陽射しを惜しむように文字を追い、准将が明かりをともすのだ。
ナイナイはベンチの背もたれに寄りかかる。
ベンチはニナの指定席だった。膝を抱えたり寝そべったりする彼女のつむじを、ナイナイは定位置から見下ろしていた。時々ニナが尻尾をつかんで、うとうとしているナイナイを怒らせたものだった。
「どんなに頑張ったってニナは戻ってこない。ニナのいない世界なんて、どうでもいい」
「三年前と変わらないのか」
頭越しにやりとりされる糾弾と抗弁に、ナイナイは興味がなかった。
「使い魔なんてそんなもんだ。准将に言われたくない」
ナイナイは、お気に入りの場所から抜いた本をぱらぱらめくる。
「持ち出すよ」
三冊のハードカバーの埃を、ふっと息で吹く。
「屋根裏でおとなしくしてる」
「その方が協会の心証もいい」
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