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5
翌日、王都は豪雨に見舞われた。
日付が変わるころ小止みになり、朝には薄日が射した。
ピートは屋根裏部屋のベッドから出てこない。ベーコンと卵のサンドウィッチを用意しても、いらないと青白い顔で言う。
「おつかい、頼んでもいい?」
「いいよ」
依頼の奇妙さに首をひねりながらも、頼られたことはナイナイの気分を良くした。
駅を使って魔法協会に飛んだ。
ピートが簡単に描いた地図を手に向かったのはパブだった。煙草とコーヒーと煙草のにおいがこびりついた店である。
「これ、頼まれた」
鏡のように磨かれたカウンターに、ピートから預かったメモを開いて見せた。
店主はずりおちた眼鏡越しにそれを一瞥して、輪ゴムで束ねた紙幣の束を二つ出した。
「これは?」
「聞いてないのか? 昨日のサッカーの配当だよ」
「畜生! 雨中なんてそうそうねえのによ」
止まり木でコーヒーを飲んでいた男が、さして悔しそうでもなく言う。
「賭けなんて、勝つか負けるか引き分けなんだよ。兄さんとこの坊主は予言者か? 雨で流れるってチャリ銭置いてった」
「坊主の一人勝ちだよ。お兄ちゃん、早く帰んな」
親切ごかしに店主が追い立てる。
「追剥に遭わねえようにな」
客のからかいから肩をいからせて、ナイナイは外に出た。
紙袋に入れてもらった札束をジャケットの内に抱えこんだ。店を出たところから、後をつける気配があった。
協会まで一気に走り抜けるために、ナイナイは一度足を止めた。
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