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6
アジールに戻ったナイナイは、くしゃくしゃの紙袋を抱いていた。
「お帰りなさい」
駅にいたシャリオットが迎えると、紙袋がミャアと答えた。
彼女の丸くて大きな金の瞳に見つめられて、ナイナイは紙袋を開けて顔をそらす。
シャリオットがのぞきこむと、小さな三毛猫が挨拶をした。
「食べたくなるほど可愛い」
「シャリオットが言うとしゃれにならないよ」
三毛猫も毛を逆立てて震えている。
「ブルってんじゃないよ。僕だって何が起こってるかわからないんだから」
ナイナイは三毛猫に八つ当たりし、パジャマ姿のピートを准将の元に引っ張りだした。
「ピートが魔法を使った」
言い捨てて、ピートをベンチに放り投げる。
「……ごめんなさい……」
ピートはうつむいたまま呟く。
「誰に謝ってるんだ?」
問う准将はコーヒーテーブルにもたれている。
ピートは顔を上げてナイナイを見る。腕組みをして立つナイナイは、紙袋をつかんだままだ。
「それが監視を怠ったから、ピート、君は魔法を使った。謝るべきはナイナイだ」
「ごめんな、ピート」
ナイナイはにっこりと謝り、憶測を語りはじめた。ところどころで、ぼそぼそとピートが付け加える。
一昨日、ピートは魔法協会から抜け出し、サッカー賭博の胴元を探した。三毛猫の売り主が競り落とした客ともめているところに割りこみ、自分が言い値で買うと申し出た。アジールに戻ってきたピートは魔法を使い、サッカーを中止させたのだ。
准将は魔法陣を床に広げた。
紙に印刷した魔法陣なら、駅ではないところへも移動できる。一度使えば塵になってしまう。原本から刷るまでの工程に手抜かりがあれば使い物にならないという、面倒な代物でもあった。
「駅に行けばいいのに」
准将の性急さにつられて、ナイナイも陣を踏む。小麦の焦げたにおいを嗅いだときには、協会本部の駅にいた。
「いらっしゃい、准将」
「マリマリに会いたい」
「お疲れさま」
係は椅子に座ったまま杖を伸ばし、床の座標を叩く。
次の瞬間、二人はどこかの庭園にいた。幾何学形に刈りこまれたトピアリーが立ち並んでいる。
マリマリはお茶の最中だった。互いに似通った妖艶な美女六人に囲まれている。彼女たちの髪色とタイトなスーツは、揃って灰色だ。
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