第1話

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「コンビニ寄るけど、シュウ飯は?」 長谷川がシュウと呼ぶのは2人の時だけ。 「今日朝飯食ってきたからいーや」 「……」 「あー…先行くな?」 何か言いたげにじっと見てくる長谷川を置いて逃げるように足を進めた。 長谷川は無駄に勘が良いから。 昨日の出来事を 俺の脳裏に焼き付いている映像を 見透かされそうで怖かった。 そんな感じで 出会ったばっかで朝まで抱いて今朝別れただけの 何も知らない若い男に、勝手に振り回されて1日過ごした。 そう、何も知らない。 名前も歳も、本当のところは分からない。 知ってるのはただ ちょっと高めの体温と ほんのり甘い匂い それだけ。 もう帰ったかな? 多分もう、会わないだろうけど。 あぁそれなら 「いつ来てもいいよ」って 言ってやればよかった。 だって寂しそうだった。 今頃また寝る所でも、探してるんだろうか。 なんて。 帰り道の間ずっと、唯の事考えながら歩いた。
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