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「…あれ」
唯が置いてったであろうスペアキーを取ろうと覗いたポスト。
中には不要なチラシやDMばかりで
肝心の鍵は入っていなかった。
まさかあいつ…持って帰ったの?
まあスペアだから困りはしないけど…
やっぱり信用するんじゃなかった。
得体の知れない変な奴の事なんて。
冷静になってみれば家の中だってどうなってるか分からない。
仮住まいみたいなもんだから貴重品なんて大して無いけど。
全部嘘だったんだろう。
歳も名前も、
寂しそうな笑顔も
縋るような上目遣いも。全部。
もうどーだっていいや。
あー酒買ってくればよかった。
なんて、
心の中だけだって、唯に文句言ったことを
後悔したんだ。
「っ、あ…のっ、おかえりっ」
玄関の前でモジモジしながらおかえりと、
「……ただ、いま?」
「うん。おかえりなさい」
出迎えてくれた瞬間に。
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