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私の名は大竹九京だおかしな名前だ。
おかしなのは、名前だけでは無い。
何故なら私は今、何処かの場所にいたのだ。
何処かの?
何でそうなったのか私には記憶が無い。
階段から転んだとか、誰かに拉致されたとか痴ほう症で、さ迷ったとか、まだ私は若いのだから、そんな筈は無いのである。
私は売れない作家を目指し、いや、売れない作家は目指さない。売れる作家を目指して日夜、SF小説を書いていた。
そうだ、確かに今日は・・・。
いかん!記憶が曖昧だ。
何か変な物でも食べたかな?
または、飲んだか?
一服盛られたか、そんな事を思った。
私は裸足だった、しかも部屋着だ。
更にここは真っ暗だ。電灯の明かりすら無いし、家の灯りも見当たらない。
しかも静かだ、多分山奥だ。こんなにも山奥に、私はどうやって来たのだろう。
どうやら事件に巻き込まれた様だ。
私はフラフラと歩き出した。
やけに地面が冷たい。雨でも降ったのか、いや・・・、しっとりとしてはいるが、落ち葉の音がする。多分ここは道だろう、私は何処へ向かっているか分からないが、兎に角歩いた。
すると、前から、ボオッ~。
と光が近付いてくる。
な、何だ?火の玉か。ユラユラ近付く。
私は急いで木立の間に隠れた。
それはゆっくりと通り過ぎた。
何と提灯だった。それを竹の棒の先に吊るして歩いていたのは、時代劇か?と思える町人風の着物を着た、恰幅の良い男の人だった。
しかも髪型が斬新だ!
まるで丁髷のような髪型だ。こりゃ相撲取りかな、直ぐにそう思った。が、ひょっとしたら、その手の幽霊かも、と声を掛けなかった。
危ない危ない。こりゃ夢かも知れない。
私は交通事故で頭を打って意識不明になり、見知らぬ世界を意識が、漂っているのかも知れない。
では、確かめよう、私は顔を叩いた。
痛かった。
果たしてこれで分かるのだろうか?
それも疑問だった。
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