始り

2/20
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
 私の名は大竹九京だおかしな名前だ。 おかしなのは、名前だけでは無い。 何故なら私は今、何処かの場所にいたのだ。 何処かの? 何でそうなったのか私には記憶が無い。  階段から転んだとか、誰かに拉致されたとか痴ほう症で、さ迷ったとか、まだ私は若いのだから、そんな筈は無いのである。  私は売れない作家を目指し、いや、売れない作家は目指さない。売れる作家を目指して日夜、SF小説を書いていた。  そうだ、確かに今日は・・・。 いかん!記憶が曖昧だ。 何か変な物でも食べたかな? または、飲んだか? 一服盛られたか、そんな事を思った。  私は裸足だった、しかも部屋着だ。 更にここは真っ暗だ。電灯の明かりすら無いし、家の灯りも見当たらない。  しかも静かだ、多分山奥だ。こんなにも山奥に、私はどうやって来たのだろう。  どうやら事件に巻き込まれた様だ。  私はフラフラと歩き出した。 やけに地面が冷たい。雨でも降ったのか、いや・・・、しっとりとしてはいるが、落ち葉の音がする。多分ここは道だろう、私は何処へ向かっているか分からないが、兎に角歩いた。  すると、前から、ボオッ~。 と光が近付いてくる。 な、何だ?火の玉か。ユラユラ近付く。 私は急いで木立の間に隠れた。 それはゆっくりと通り過ぎた。  何と提灯だった。それを竹の棒の先に吊るして歩いていたのは、時代劇か?と思える町人風の着物を着た、恰幅の良い男の人だった。  しかも髪型が斬新だ! まるで丁髷のような髪型だ。こりゃ相撲取りかな、直ぐにそう思った。が、ひょっとしたら、その手の幽霊かも、と声を掛けなかった。  危ない危ない。こりゃ夢かも知れない。 私は交通事故で頭を打って意識不明になり、見知らぬ世界を意識が、漂っているのかも知れない。  では、確かめよう、私は顔を叩いた。 痛かった。  果たしてこれで分かるのだろうか? それも疑問だった。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!