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「細雪」のEPの売上は700万枚を突破し、和弘と事務所に莫大な利益をもたらした。同じ事務所に所属するアーティストたちも、和弘を見る目がまるで変わった。
「やったな! おまえならやれると信じていたよ」社長は心から和弘の成功を祝ってくれた。
社長の気持ちは嬉しかったが、彼は素直に喜べなかった。
これは俺の歌じゃない、という感覚がどうしても抜けなかったからだ。
彼は密かにあの男が名乗り出るのを恐れるようになった。少しくらい売れてくれたらーーそんなちょっとした出来心だったのだ。悪気があったわけではない。それでももし、自分のところに男が現れたら、素直に謝ろうと思っていた。
謝礼が必要ならいくらでも出す。
金には困っていない。
何もしなくても、「細雪」が富をもたらしてくれるからだ。
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