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「おい、お前。今のうちに早く行け」
アレク兄ちゃんの声だ。ぼくが振り返ると、小さい猫がアレク兄ちゃんに促され、その場から離れて行く。さすがだなあ。
「アレク兄ちゃん、大丈夫?」
ぼくが尋ねると、アレク兄ちゃんはビクリとした。
「は、はあ? ぜぜぜ全然ビビってねえから! あああんな犬なんか全然こわくねえし!」
ん?
アレク兄ちゃんてば、喋り方が変だね? どしたのかな?
「アレク兄ちゃん、喋り方が変だよ?」
「へへへ変じゃねえし! おおお前みたいなバカ犬の助けなんか必要なかったし!」
そう言うと、アレク兄ちゃんはおうちの中に入って行った。バカ犬だなんて、相変わらず失礼だよね。
次の日。
ぼくは昼寝をしようと思って、庭でうとうとしていたんだ。
すると、アレク兄ちゃんがとことこ歩いて来た。よく見ると、口に何かくわえてる。
アレク兄ちゃんは、ぼくのすぐ近くまで来て、くわえていた何かをポトリと落とした。
うわ、緑色のでっかい虫だよ。アレク兄ちゃんってば、いつも外に出て行っては虫を捕まえて来るんだよね。
「ほら、俺様が捕まえてきた獲物だ。今日は特別に、お前にも食わせてやる」
えっ? ぼくは恐る恐る、匂いを嗅いでみた。でも、あまり美味しそうじゃない……。
「うーん、ぼくはドッグフードの方が好き――」
そう言ったとたん、アレク兄ちゃんにペチンされた。いててて。
「痛いじゃないか、何すんのさ」
「ふん、お前みたいなバカ犬には、この絶妙な味は分からんのだ。もう、お前になんかあげないからな!」
ぷりぷり怒りながら、おうちに入っていくアレク兄ちゃん。何を怒ってんのかな?
まあいいや。ぼくは目をつぶる。今はお昼寝の時間なのだ。
おやすみなさい……。
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