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「若頭、今日、『エリザ』で接待っす」
「ああ? 俺、パスしちゃ駄目か。 ちょっと、用事あんだよ」
「また、若姐さんとデートっすか。門限10時でしたよね? その後で良いから顔出して下さいよ。あんま毎回、フケってっと、感じ悪いですって」
「……わぁったよ」
『エリザ』は宗像組の管理下のキャバクラの一つで、俺が毎月夜の逆指名を受けるキャバ嬢が居る店だ。
慶子と付き合い始めて唯一カラダの関係を持ったオンナで、目下今一番苦手にしている相手だ。
胸もお尻もプリンプリンで、髪も金髪でバリバリ化粧映えするイイ女なんだが、本当にマジで夜遊びも浮気も御免だった。
誘われても、強気で断れば良いだけの話。
だが、持ち前の流され体質が災いして、なし崩しに夜を共にした失敗を思い出すと最近は会うのさえ戸惑う程、苦手にしていた。
「あのじゃじゃ馬にマジになってんなあ?」
勝利が事務所に顔を出す也そう言って俺の所にやって来た。
「駄目なのかよ?」
「べっつに、でもよ。若よ」
幹部の勝利は俺の事を若と呼ぶ。
俺は、煙草に火を点けながら、何となく勝利の話を聞きかじるつもりだった。
「あのガキで勃つとか、ある意味凄ぇ。あんなの突っ込み甲斐ねえだろ……」
思いっきり吹いて、火を点ける寸前で、煙草を口から落とした。
「まだ、ヤッてねえ(勃ったのはこの際置いとく)!!」
「じゃあ、何でここんとこあのキャバ嬢、抱くの辞めてんだ? 喧嘩しない主義で、インテリ気取って大学何かクソマジメに行ってるって陰口はもう慣れたけどよ。女にだけはモテて、あっちの方だけは唯一一人前だってのに、カッコ付いてねえよ。少し世間体考えろよ」
勝利の毒舌はいつもの事だが、事、慶子の事に関しては、人一倍きつい毒舌を吐いて来る。
恐らく俺達宗像組が、慶子と初対面となった祭り会場の所場(しょば)で揉めて、慶子が俺を除く祭り会場の組員全員を一人で拳で沈めた時の事を人一倍根に持っている節がある。
性格がドSなだけに、一度はヤられたものの唯一すぐ意識を取り戻し、さあ反撃って時に、俺が『待った』をかけたのを一年以上たった今も、時々まだ蒸し返して来る。
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