第一話 修平と勝利

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あの時、俺が邪魔してなかったら、『顔に傷喰らって、泣いて帰ったはずだ』と言った時は、ゾッとした。 『 15歳の女子高生相手に、割れた酒瓶を背後から振り下そうとした動機がそれか!! 』 と。 もし俺があの時止めなかったら、本当にやりかねなかっただろう。 そうしたら、いくら慶子でもあの不意打ちを躱し切れたとは思えなかった。 結果云々は、今更吟味したってどうしようもない。 せっかく無事に済んだんだ。 出来れば、もう慶子に喧嘩なんてさせたくない。 何処で、どれだけ喧嘩して来たか知らないが、かなり経験を積んでいるにしろ、慶子を戦力としてアテになんてしてねえ。 弱虫だろうが、おっとりだろうが、言いたい奴は言えば良いんだ。 振り翳す強さも、威厳もないからって、他人にあやかろうなんてよ。 そこまで、堕ちてねえっつぅの。 慶子が手傷を負わせた組員も、昏倒させられた組員も此処一つダメージの重みに欠けていた。 ガキの喧嘩じゃねえ。 命の危険も辞さない喧嘩ならもっと徹底的に痛め付けないと勝利みたいな奴は、すぐ回復してやり返して来る。 そうならないように、ヤれる時になるべく深いダメージを与えて置くに越した事ないんだ。 無鉄砲も危ういが、逆に自己防衛心のない無防備はもっと危うい。 大体、女なんだ。 そんな事に自分から参戦していく事自体、これ以上ない位危うい。 手指の傷一つ惜しんで、大事にしろよ、身体を、自分を。 特に、目の前の勝利みたいな男は要注意なんだから。 「あんま、ぴーぴー処女だからって調子乗ってんなら、ちょっとベッドに押し倒して、頭の上か後ろ手にネクタイで手首でも縛れば大人しくなるだろ」 ( は? ) えっと、だな。 まず、俺はこいつと今、何の話をしてったんだっけって突っ込んで良いだろうか? 慶子との今後の付き合いについて助言(かなり迷惑だが)を受けていたのは、幻影か、それとも幻か? 俺、マジックマッシュルーム的違法薬物とかしてたっけって、ぜってぇえしてねぇえ! 俺の組は、喧嘩上等でも、薬と売春と地上げはやらねぇええんんだよぉお! 後は知らねえが(引き金の付いた黒い物はある)。
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