曇りのち雨、ところにより猫

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◆ 国道沿いに面した古めかしいパチンコ店には、時代遅れのネオン看板がぶら下がっている。 これまで幾度となく足を運んだ黄金町サンダーも今日で見納めだなと、雅刀はほくそ笑む。 客で埋め尽くされた最新台の横を通り抜け、二階のスロットフロアに向かう。末端の台には、この店には似つかわしくない派手な女が座っている。切り揃えられた前髪の下には、釣り上がった眉と黒目がちな目。スロットの回転に合わせて、ツインテールが揺れている。黄金町サンダーの常連客だ。 「よう、牡丹」雅刀は女の隣に腰掛ける。肩に触れようと伸ばした手は、跳ね除けられた。 「用もないのにここに来ないでっていつも言ってるでしょ。警察呼ぶわよ」 「声かけただけで警察沙汰か?」 「そうよ。私はセージくん以外と話したくないの」  左右の下段リールに『7』中央上段に鳥。ビッグ確定のリーチ目だ。牡丹は表情をくるりと変え、喜々として席を立ち上がった。 「残念だな牡丹、お前のセージくんはもういないぜ」 「はあ? 頭沸いてんじゃないの?」ふいと顔を背けてスカートを翻し、お気に入り店員を探しに行く。 どんなに探しても見つかりはしないだろうがな。雅刀が大きく構えていると、牡丹に腕を取られながら、見覚えのある顔が近付いてきた。村井誠司だ。 「なんでお前がここにいる?!」
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