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「セージくんは大学休みのときは、いつも昼からここでバイトしています~」
誠司の代わりに牡丹が答える。そして甘えた声で「ねえ、セージくん。ひとりじゃ揃えられないの」と、シャツの袖を引いた。
少し身をかがめた誠司の身体が、ふっと牡丹に近付く。『7』が回ってくるタイミングを見ながら誠司がリズムを取り、牡丹はそれに合わせてストップボタンを押す。トントントン、と『7』が横に並んだ。
「やった! いつもありがとう」
笑顔を交わす二人の様子を憎々しげに睨みつけていた雅刀は、スロット台に拳を叩きつけて立ち上がった。
――なぜ、村井誠司がまだ生きている。時田のやつ、約束を破りやがったな……!
怒りの矛先をそのまま純平に向けると雅刀はわざと誠司に肩を当てて、早々に店を後にした。タクシーを拾い、時田純平の住むアパートに直行する。
「時田! 開けろ、時田!!」
返事も待たずに木製の扉を蹴り破る。吹き飛んだドアが倒れ、埃が舞い上がった。部屋は、もぬけの殻だった。
――どこへ逃げやがった。
雅刀はポケットからスマートフォンを取り出した。
「他の仕事は後回しでいい。時田純平を探させろ」部下にそれだけ言いつけて、荒ぶる気持ちを押さえ付けるように深く息を吐き出した。
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