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名の由来に妙に納得した純平だったが、女はあまり興味無さそうにポンと純平を床に下ろすと、「実はさぁ」と、少しばかり真剣な声を出した。
「今日は差し入れのほかに、いっこ大事な話があったんだ。……セージくん、もしかしたら狙われてるかもしんない。ここに居たらヤバいと思う」
「?」
「私にべた惚れの男がさ、私とセージくんの仲を勘繰ってんの。付き合ってないって何度言っても聞いてくれないし。……ほら、黄金町サンダーにくる赤毛男。分かるでしょ? あいつマジで何しでかすか分かんなくて。だからセージくん。……私のマンションに来て!」
純平は息を飲んで二人を見上げた。
「私のマンションならセキュリティもばっちりだし、あんな凶悪単細胞、絶対入れ……」
「行かないよ」
「ホントに危険なんだって!」
「牡丹のマンション、猫飼える?」
「……厳禁だけど」
「じゃあダメだ。ちくわを置いていけない」
不満げに頬を膨らませた女の方は見ずに、誠司は純平に「な?」と優しく問いかける。
純平の心の涙腺が緩んだ。
――ヤバい、こいつマジでいい奴かも。
涙が流せない代わりに、純平は小さくミャン、と鳴いた。
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